皮膚についてのひとくちメモ

アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、乳児期に発症し、その多くは思春期までに自然と治癒する小児の代表的な病気と考えられてきました。世界的に見ると、成人型アトピー性皮膚炎は、あまり話題になっておりません。なぜ、日本では80年代からアトピー性皮膚炎が増加し、社会問題になったのでしょうか?

「アトピー性皮膚炎の定義」とは、「増悪・寛解を繰り返す痒みを伴う湿疹病変を主体とする疾患であり、患者の多くはアトピー性素因を持つ。」(1994年、日本皮膚科学会)とされています。アトピー性皮膚炎は、「〜に対するアレルギーが原因で発症する湿疹である。」とは定義されていません。つまり、ある1つの原因で起こる病気ではないのです。種々な原因や増悪因子が複雑に絡み合い、アトピー性皮膚炎を治りにくい疾患にしているのです。

つまり、現在の医学をもってしても、アトピー性皮膚炎は、万人に同じ治療法で治る病気ではないのです。原因を取り除ける場合には取り除き、取り除けない場合には、症状をコントロールしていくことが重要です。
アトピー性皮膚炎の原因
大きく分けると、2つの原因に分けることが出来ます。
  1. アレルギー病としての側面
  2. 非アレルギー病としての側面
これらの原因が複雑に入り交じり、アトピー性皮膚炎を難治性の疾患にしているのです。

アレルギー病としての側面
●I 型アレルギー (即時型アレルギー):ダニ、ほこり、かび、花粉など
ダニ、ほこり、かび、花粉などのアレルギーの原因物質(アレルゲン)に対して、一般の人よりも過敏な反応をしてしまう人がいます。このような人は、遺伝的にアトピー素因を持っていると考えられています。もう少し詳しく述べると、アトピー性皮膚炎は、アレルゲンと結合した、IgE(免疫グロブリン)というたんぱく質が、肥満細胞にヒスタミンなどのかゆみを引き起こす物質を作らせて起こる場合があります。
例えとして、日本の高温多湿な気候に対応していない西洋的な建築(いわゆる通気性が悪く、ダニの好むソファーや絨毯などのほこりのつきやすい家具を置く)が流行したことによって、家庭内におけるダニの量は30年前の2倍に増加しているとの研究データがあり、この結果、アトピー性皮膚炎患者を増加、重症化させたのではないかと推測されています。

●I 型アレルギー (即時型アレルギー):食物アレルギー
子供のアレルギー側面として重要なのが食事です。2〜3歳までの子供は、消化酵素の分泌不足や消化管の未発達により、タンパク質がアミノ酸まで分解されないために抗原性を有しやすく、アレルギーを起こしやすい状態にあるのです。

●IV 型アレルギー (遅延型アレルギー):かぶれ
物質が繰り返し皮膚についているうちに、皮膚がこれらの物質を異物と認識し、拒絶反応をおこすことにより、一定 の時間をおいて皮膚炎を生じることがあります。この世に存在する全ての物質について可能性がありますが、大切なものをいくつか紹介します。
  1. 金属に対するアレルギー
    ネックレスなどの装飾品、飲み水、歯科金属、革製品など
  2. 外用剤
    特に多いのは、非ステロイド外用剤。
  3. 消毒薬
    アトピー性皮膚炎では、体についた菌を除去しようとして、消毒をしすぎたり強い洗浄力を持つ洗剤でからだを洗ったりする人がいますが、かえって皮膚炎を悪化させることがあります。
  4. 衣類
    洗剤、特に、柔軟剤、漂白剤などが、十分にすすげていないことがあります。

●細菌感染、真菌感染により引き起こされたアレルギー
  1. 皮膚における黄色ブドウ球菌の存在
    黄色ブドウ球菌が、狭義の感染ではなく、そこに菌が存在しているだけで(コロナイゼーションという)、アトピー性皮膚炎の皮疹形成に1次的に関与しているのではないかと考えられるようになってきました。イソジン外用療法、ヒビテン外用療法などの消毒療法が、ありますが、皮膚に対する刺激性が強いために慎重を要します。酸性水もありますが、有機物の存在下では、殺菌効果が下がるとの報告もあります。
  2. 慢性扁桃腺炎
    扁桃腺に慢性的な細菌感染があり、アトピー性皮膚炎を悪化させている場合があります。
  3. 真菌
    皮膚に常在している真菌や、腸内常在菌に対するアレルギー反応として、アトピー性皮膚炎を悪化させている場合があります。

●非アレルギー病としての側面が原因のアトピー性皮膚炎
  1. ドライスキン
    アトピー性皮膚炎の患者では、皮膚のバリアー機能を司る因子として重要な細胞間脂質であるセラミドの減少や、水分保持作用を有するNMF(Natural moisturing factor)の低下が乾燥性の皮膚を作り出す誘因として注目されています。
  2. 掻爬(ストレス蛋白:HSPの関与)
    アトピー性皮膚炎では、もともとかゆみをおこしやすい状態があるうえに、ストレスがかかることによりすぐに掻爬してしまいます。最近では、ストレス蛋白が、かゆみを引き起こすのではないかとの見解もあります。
  3. 食事
    アトピー性皮膚炎では、何もしなくても体のかゆみがあります。食物の中には、かゆみの原因となるヒスタミンや、コリン、またヒスタミンの遊離作用を有する物もあるのです。

 

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